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小室哲哉氏逮捕に思うことなど

 正直に申しますと、当方、小室哲哉氏の関係しているCDはこれまで一度も購入したこともないし、それどころか、おそらく一曲も頭から終わりまでちゃんと聞いたことがないので、こんな人間がこの事件に突っ込みを入れてよいものかどうか躊躇しましたが、とりあえずコメントしてみます。

 報道によると、どうも香港でのビジネスに失敗して多額の借金を背負ったとのことですが、この香港の会社設立にあたって小室氏は「ハリウッドに進出する近道は中国だ」などと関係者に語っていたそうです。いわゆる「関係者筋の話」なので、どれぐらい信憑性があるのか分かりませんが、この言葉を聞いての私の感想。

「へー、小室さんって本気で音楽活動で世界征服するつもりだったんだ。」

 実際のところ、90年代後半の稼ぎだけで一生遊んで暮らせたと思いますが、にも関わらず持ち金をつぎ込んでさらにビジネスを拡大しようとしていたらしい。

 実のところ、90年代の小室さんは、いい意味でも悪い意味でも『商売』として割り切って曲作ってたんだろうと、私は考えてました。先端を行くダンスミュージックと、サビ部分だけは特に丁寧に作られたメロディーラインを組み合わせて(乱造気味と言っていいと思いますが)たくさんの曲をつくって売り抜ける、という戦略。確かに、小室さんにはきれいなメロディーを作る才能はあったのだとは思いますが、ビート周りは言っちゃ悪いですが借り物。アタマのいい小室さんですから、そんなことは先刻ご承知のはずで、だから彼は「国内市場専用の音楽」という見切りをもって、「儲ける時に儲けちゃえ」と活動しているのだと想像していたわけです。いわば、計算づくのビジネスマンの姿ですね。

 ところが、どうもご本人は国内同様の戦略で世界に出ていけると判断していたらしい。もしかしたら、大ヒット連発の陰で、口うるさい音楽ファンから、『あんなの洋楽のパクリじゃん』とか『今さら「レイブ」とか急に持ち上げられても、今西暦何年ですか、って話やん』とか『昔、ハウスのオーザックのCMに出てはりましたよね、確か』などと陰口をたたかれているのに我慢ができず、『今に世界進出して、奴らを見返してやるー!』と頭に血が昇ってしまったのかもしれません。

 個人的には小室さんの音楽には興味がなかったので全然聞いてはいなかったですが、日本の音楽ビジネス的には純粋にお金儲けのため全力をつくすタイプのクールな職人ってのも存在して欲しいので、今回の小室さんの騒動はちょっと残念でしたね。彼はそのタイプの職人になれる人材だったと思われるので。

 今回の騒動で、思い出したのがイギリスの3人組のストック・エイトキン・ウォーターマン。小室さんのちょうど10年程前の音楽プロデューサーチームで、カイリー・ミノーグやリック・アストリー、バナナラマをプロデュースしていた、というと思いだされる方も多いはず。彼らも当時流行のユーロビートに歌いやすいモータウン風のメロディーを合わせて楽曲を連発リリース。世界中でヒットして大儲けしました(商売のやり方も小室さんに似てますね)。

 90年代に入ってトンと名前を聞かなくなりましたが、3年ほど前にスカパーのディスカバリーチャンネルを見ていたら、偶然3人組の1人、ピート・ウォーターマンに出くわしました。その番組は別に音楽がらみでもなんでもなくて、世界の鉄道マニア紹介番組。なんとウォーターマンさんは英国でも有数な鉄ちゃんで、プライベートの鉄道路線を持ち、「フライングスコッツマン」といった有名な蒸気機関車やら、日本の新幹線に触発されて作った英国のHSTやらを保有し、動態保存してました。早い話が、音楽ビジネスで儲けるだけ儲けて、いまは悠々自適というワケ。

 小室さんも、変な色気を出さずに適当なところで第一線から逃げちゃえばよかったのに。イギリスでは伝統的に、成功したら田舎に引っ込んで隠遁生活という王道がありますが、今の日本だと「生涯現役」路線一本やりで息苦しいですね。小室さんもその犠牲者でしょうか。江戸の頃には隠居という制度が確立していたようですけれど...。

コメント
なるほど。
ものすごく納得です。
なんで音楽で成功収めるのに
ハリウッドやねん?という疑問はるあるけれども、ドメスティックに過ぎない才能を
海外でも通用する、したい、させねばならぬ
と変な方向に行ってしまったわけですね。
しかし趣味は大切ですね。小室さんは
大画面のプラズマディスプレイでTVゲーム
やるのが趣味だったようですけど、なんか、
悲しいですよね。
  • 2008/11/07 1:43 AM
小室氏はTMでデビューする前から世界で売れることを目標にしていんですよ。「ハリウッドに進出する近道は中国だ」って話は小室自身口にしてたと思ったけど…。どこで語られたかちょっと覚えてないですが。
事務所とのトラブル、固定ファンにしか売れず世界に出られないTM。売れるためにやりたいことをやるためにTMは一度終わらせ小室はプロデュースへ。しかし日本での成功も小室氏からすればまだまだ夢の途中。隠居なんて考えてなかったはずです。
#ちなみにTMのボーカルは当初外人さんになる予定だった。母国に帰っちゃったので宇都宮氏をボーカルに迎えた。リーダーの木根とボーカル宇都宮を抜かれたスピードウェイはバンドを解散。

「ハリウッドに進出する近道は中国だ」の前にはEUでユニットを作って活動もしてましたこともあります。また、バナナラマやバックストリートボーイズに楽曲を提供するなどの活動もしてました。USはもちろんEU経由も無理ってことで日本の音楽が売れてるアジアに目を向けて香港経由で世界へって話になると。

ストック・エイトキン・ウォーターマンの話がありますが小室氏は89年ぐらいからしばらく彼らにリミックスやミックスダウンをやってもらってます。彼らと仕事をやり出してからビート周りはそれまでとがらっと変わりました。後のTKプロデュース時代はある彼らに影響されやり方をマネた活動です。
小室氏はダンス系よりもロック系が原点の人なのでビート周りが借り物になるのも…。

いつどの時代か知りませんが、海外でミックスダウンを頼んだら「これじゃ踊れない」って言ってドラム関係を差し替えられたりしたとか小室自身言ってましたよ。

会社やレーベルを立ち上げては閉めってことをちょくちょくやってましたしROJAMで大失敗したことはファンの間じゃ知れてることだったので大丈夫かと思ってましたがやっぱり大丈夫じゃなかったですね。それが詐欺事件になるとはさすがに予想できませんでしたが…。
  • 藤沢
  • 2008/11/07 2:31 AM
>無記名様

書き込みありがとうございます。
「ドメスティックに過ぎない才能」というのは、ちょっと小室さんに酷かもしれません。どうも私には彼の90年代後半の仕事は、『分かってやっていた商売』という印象があるんですよね。現在のビートたけしさんが、(今や本業の)映画を作るお金をつくるためにテレビに出演しているような感じ。

なので、純粋に趣味の世界に入って隱居するか、あるいはたけしさんの映画みたいに、売れ線の仕事とは別に趣味の音楽活動をするとかがよかったのかも。

>藤沢様
書き込みありがとうございます。

小室さんの詳しい情報、ありがとうございました。言い訳のように、「小室氏の作品は聞いたことがない」と書き込みましたが、門外漢の意見で的はずれなことも多いかと思います。ご容赦くださいませ。

 ストック・エイトキン・ウォーターマンとは一緒に仕事をしていたんですねぇ。かねてから小室氏のプロデュースの仕方が彼らに似ているなぁと思っていたのですが、それを聞いて納得です。できれば、彼らの引き際についても参考にできればよかったかも...。

 そもそもの話しでいうと、小室さんの「世界で売れる」という目標が21世紀の今日ではかなり難しくなってしまったような気がします。それは「日本人が世界に進出する」ことの難しさというよりも、世界の音楽状況の変化のため、カリスマ的なロックスターの時代が終わってしまったところにあるのではないでしょうか。「テクノ」とか「ハウス」などといったコアなジャンルの中で世界で活躍する日本人は結構いるようですし、そういう意味では昔よりも世界に進出する日本人は増えてるんじゃないかと思います。
 逆に、世界中で持続的に安定して売れてるバンドやミュージシャンというのがあまり思い浮かびません。当方がトシを食って耄碌しているだけかもしれませんが、U2以後『本国以外でも名前ぐらいは多くの人に知られている』ってグループありましたっけ?
  • 産業ロック製作所長
  • 2008/11/08 9:56 AM
『分かってやっていた商売』という印象は間違ってないと思います。
TMも含め「売るための曲」を作ってましたから。悪い言い方をすると大衆に媚びた音楽を作っていた。

小室氏の場合、特定のバンドやミュージシャンが持続的に安定して売れる必要はなかったんじゃないでしょうか?
つまり自身がプロデュースしたバンドやミュージシャンが売れなくなれば違うバンドやミュージシャンを売ればいい。あるいは既に世界的に売れてるミュージシャンをプロデュースして売ればいい。どういう経緯であれ自身の作った曲が世界中で売れれば勝ちって感じで。

洋楽には疎いのでどんなグループが世界的に売れてるのかさっぱりです。俺は洋楽だとDreamTheaterが聞ければそれで十分なので。
  • 藤沢
  • 2008/11/08 10:57 PM
藤沢様

再度の書き込みありがとうございます。

TMの頃から「売るための曲」を作ろうとしていたのだとすると、90年代後半期は本当に夢が叶いつつあった時代だったんですな。

だとすると、21世紀に入ってからは、かなりつらい時をすごしていたんでしょうね。だからこそ、ここで捲土重来とばかりにアジアにのめり込んでいったのかも。一つ歯車が狂うと、なにもかも上手くいかなくなってしまうところが人気商売の恐ろしいところです。
  • 産業ロック製作所長
  • 2008/11/10 11:59 PM
>純粋にお金儲けのため全力をつくすタイプのクールな職人
いま、日本の音楽ビジネス的にそのポジションにいるのは、つんく♂氏でしょうかね。

>世界中で持続的に安定して売れてるバンドやミュージシャン
最近のロックバンドでは、コールドプレイが代表格でしょうかね。
  • 割也
  • 2009/04/17 12:02 AM
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